英語と米語のスペルの違いを決定づけた人物【ジョンソンとウェブスター】

英語と米語のスペルの違いを決定づけた人物【ジョンソンとウェブスター】

英語と米語のスペルの違いを決定づけた人物【ジョンソンとウェブスター】

イギリス英語とアメリカ英語の違いについては良く耳にする。曰くスペルが違う発音が違う単語の意味が違う等々。

スペルに関してはアメリカ英語の方がシンプルで理にかなっていると思う。例えばcenter(米)とcentre(英)、color(米)とcolour(英)、organize(米)とorganise(英)と行った具合に、米語のほうが発音をそのまま綴っている。

この綴りの差異は何処から来たのだろうか。

調べてみると、サミュエル・ジョンソンノア・ウェブスターという人物に辿り着いた。

二人はそれぞれイギリスとアメリカで英語辞典を編纂した人物で、ジョンソンはイギリス英語の綴りを、ウェブスターはアメリカ英語の綴りを確立したと言える。

イギリス近代英語のスペルの確立

何となく、大昔から英語は今と同じような英語だったと思っていたが、イギリスの長い歴史の中で英語の発音や綴りは時代によって変化して、近代英語のスペルが確立したのは18世紀になってのことらしい。

その少し前の時代、15〜16世紀頃から印刷技術の発展により新聞や本・雑誌が普及して、人々の識字率は上がっていた。しかし当時はまだ全国共通の単語スペルは定まっておらず、各地で「自分達の話し言葉の発音に当てはまる綴り」を使って文を書いていたようだ。

難解な単語や専門用語については辞書があったのでスペルは統一されていたが、日常の英単語についてはバラバラだったらしい。

更に18世紀には、ご近所のイタリアとフランスが素晴らしい辞典を次々と完成させていたのに対して、イギリスは完全に遅れを取る形となっていた。

当時ヨーロッパでは『正しい』言語を持っていることが、文明国家として重要だといった考えが支配的であり、信頼のおける辞書の編纂は国家的急務と言っても良いくらいだった。

日常英語を定義したサミュエル・ジョンソン

そんな訳で18世紀、この時代の辞書に不満を持っていたロンドンの本屋業界が、当時の文壇の大御所 サミュエル・ジョンソン Samuel Johnson に辞書の執筆を依頼。


photo by quotpedia English

ジョンソンは独力で1755年英語辞書 A Dictionary of the English Language を完成させた。

国家的急務とか言っておきながら一人にやらせてる所に矛盾を感じないでもないけど、まぁそこは置いといて。

ジョンソンの辞書の特徴は
① 4万語の日常語彙を載せた一般的辞書であること
② 11万例の用例を用いて語義を明らかにしようとしたこと
の二点と言われている。

それまでの辞典は難解語の意味を説明するものや百科事典的な解説を加えたものが主流で、私達が学校で使っているような、日常の言葉を載せたものは無かった。日常的に使われる言葉を広く集め、その意味と用例を掲載したジョンソンの辞書はそれまでの英語辞典とは明らかに一線を画していた。

ジョンソンの英語辞書は、その後20世紀にオックスフォード英語辞典(OED)が完成するまで150年もの間、最も権威ある英語辞典であり続けた。

…と言うわけでなんだか凄い人だった、サミュエル・ジョンソン。

ところでこの時代、ブリテン島では大母音推移という現象によって発音がダイナミックに変化していた。その結果、綴字と発音の乖離という問題を抱えるようになった。この問題は後のアメリカ英語辞典における綴字改革に繋がっていく。

アメリカ語を確立したノア・ウェブスター

一方、大西洋を越えた新大陸では1776年にアメリカが独立。それまではイギリス英語に歩調を合わせていたアメリカだが、独立前後から態度を変えてきた。

そのアメリカで、ノア・ウェブスター Noah Webster1828年アメリカ英語辞典 An American Dictionary of the English Language を発行した。


photo by Today I Find Out

この辞書の中で、ウェブスターはアメリカ式綴り(center、color等 )を発表している。

アメリカ式綴りを提唱した理由として、子供向けの本には「ウェブスターは頑固者で、スペルと発音が違っているのが我慢できなかった」とか書かれている。綴字と発音の乖離という問題に対するアメリカなりの解決法といった所だろうか。

実際のところ話はもう少し複雑で、政治的な意図もあったそうだ。

イギリスから独立したものの、まだ不安定な『アメリカ』のアイデンティティ。国として独立するためにもイギリスとは違う自分達独自の文化が欲しい自分達の言葉が欲しい

そういった人々の想いを背景に、独立した国家のアイデンティティとして「アメリカ式綴り」は受け入れられていった。

実のところ、すでに固定している綴りを変更させるのは容易な事ではないらしい。英語に関しては、ジョンソンの辞書によって綴りはある程度確立されていたので綴字改革は困難が予想されていた。それでもウェブスターのアメリカ式綴りがアメリカ人に受け入れられたのは、アメリカ人の『アメリカ語』に対する想いあってこそだったのだろう。

こうしてイギリス英語とアメリカ英語のスペルの差異が確立された。


ちなみに英語の綴りと発音が一致しない問題の原因となった大母音推移についてはこちら。
↓↓

では今回はこの辺で。
(°ω°)ノシ

イギリスカテゴリの最新記事